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上海っ子AZUが早朝に見る夢の跡。


by azu-sh
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わたしと中国語との出会い (その4)

 高校の先生の勧めで行くようになった中国語講座だが、わたしにとって毎回の授業はかなり重荷だった。中国人の先生の話す中国語が全く聞き取れないのだ。その頃、わたしは黄老師(黄先生)という北京ナントカ大学から来た中年の女の先生のクラスだった。彼女は外国人に中国語を教えるプロで、授業は確かにテンポ良く、楽しい雰囲気だった。来日したばかりの黄先生は日本語が全く話せなかったので、授業中もその前後も、使える言語は中国語のみ。わたしは完全にクラスの落ちこぼれだった。毎回席が決まっていて、質問に答える人を席順にあてていくのだが、先生はわざと順番を変えてわたしに簡単な質問が来るようにしてくれた。しかし、それでも答えられなくて、沈黙が続いてしまう。先生はさすがにあきらめて、わたしを飛ばしてみんなをあてるようになった。

 (もうやめようかな、たぶん向いてないんだ)…中国語講座に通って一年半が過ぎていた。わたしは自分はもうこれ以上伸びないだろうと思い、中国語講座に行くのをやめようと考え始めた。その時、三歳の時に別れて以来数度しか会ったことのない父から電話があった。「進路はどうするんだ?進学するなら援助するぞ」。わたしは中学生の頃からボランティアをしていて、高校を卒業したらそれをもっと本格的にやろうと考えていたので、「ん~進学はしない。」と答えた。その時、中国語講座でもらった夏期短期留学の案内が目にとまった。
 「ねえ、お父さん。そのかわり、留学したいんだ。費用助けてもらえる?」中国語は完全にやめてしまうつもりだったのに、(やめちゃう前に、中国がどんな所なのか見てこよう)と思い立ったゲンキンなわたしは、中国ハルピン市黒龍江大学に留学することになった。動機は単純、海外に行ってみたかったから。これがわたしの中国語人生の転機になるとは知らず、何の期待も目標もないまま、初めての飛行機に乗り込んだ。

 中国に着いた最初の日に口にした唯一の中国語は「不要」(いらない)だった。そればかり言っていた。きれいなものを見てもおいしいものを食べても、「不要」しか出てこない…(笑)。ところが、一日また一日と過ぎていくごとに、少しずつだけど、今まで口にしたこともない長い文章が中国語で言えるようになってきたのだ。大学の留学生面接の時、わたしは中国人の先生たちの前でこう言った。“在日本的时候我是高中生,可是在中国的时候我是大学生,所以我很高兴。”(日本にいる時は高校生だけど、中国にいる間はわたしは大学生。だからうれしいです)どうやら、この一言でわたしの属するクラスが決まったらしい。一番レベルの高い高級班だった。

 ハルピンでの授業は、いつもの授業と違った。日本語なんて一言も使っていないのに、先生の話していることが100%わかるのだ!わたしは積極的に発言し、質問した。授業が終わると街へ繰り出し、バーゲン中のデパートでTシャツを買ったり、自由市場と呼ばれる路上の八百屋さんや馬車に乗った果物屋さんから目新しいものを次々買った。どこへ行っても中国語で話した。今までのわたしと脳が別人になった気分だった。放課後中国語を教えてくれる家庭教師の大学生とも仲良くなった。一時間レッスンの予定が二時間、三時間も時間を忘れて中国語でおしゃべりをした。知らなかった、中国って楽しい!中国語ってこんなにおもしろい!!

 ハルピンから戻ってきた最初の日本での授業で、黄先生が「初めての中国はどうでしたか?」と尋ねてくれた。わたしはなんとそれから10分ほど、しゃべりっぱなし。どんなに楽しかったかを中国語でまくしたてた。驚いたのは黄先生とクラスメートたち。みんな目を丸くして「あづさん、いつからそんなに中国語できるようになったんですか?」と口々に言う。それもそうだ、留学に行く前のわたしはクラスで唯一「口を開こうとしない子」だったから。ハルピン留学から帰ってきたわたしは、中国語をライフワークにすることに決めた。初めて中国の洗礼を受けたわたしは、身も心も中国大陸に奪われてしまったかのようだった。
  続く…

 当時は道路に馬車専用通路まであった、馬やロバの荷車。
 よく見かけたけど、今はどうなっているんだろう。
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 歩道を占領して猿の芸を見せていた。
 わたしは猿ではなく見物人を見物していたが。
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 「戦後流行った近所の駄菓子屋さんだよ」と
 母に言われても信じそうなセピア色。
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 大学の校舎の横で「香瓜」を買う。
 マクワウリという小型のメロン。甘くておいしい。
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by azu-sh | 2010-09-22 03:04 | 「あづ」の中国語ティータイム