人気ブログランキング | 話題のタグを見る

上海っ子AZUが早朝に見る夢の跡。


by azu-sh
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

病院をはしごして <「あづ」の「うつ」②>

 話は中国に行くしばらく前に飛ぶ。
 あづの体調はかなり前からヘンだった。鎮痛剤が必要なほどの頭痛、吐き気がするほどの激しい肩こり、どうしようもない疲労感、万年風邪をひいてしまったような倦怠感、止まらない悪寒としつこい不眠、下痢と便秘の繰り返し……。
 (これはなんかとんでもない病気かもしれない)と思い、総合病院へ検査に行った。ふらふらと広い病院を歩き回って血液検査や尿検査、はたまたレントゲンやCTまで撮ったのに、検査結果は「異常なし」。各科から届いたデータはいずれもいたって正常値だった。
 「……で、何が心配なんですか?」白衣のおやじがわたしの顔を覗き込む。
 あのねー、こんなに体がしんどくて、しんどくてたまらないから病院に来てるの!それがわからない?「治してくれ」って言ってんじゃない。ただ、なぜこうなってるのかを知りたいだけなの!
 白衣のおやじは「ふぅむ」と一瞬考えて「ま、過労ですかね」と言った。
 過労……?あづも「ふぅむ」と一瞬考えた。そっか、病名じゃないけど一因とは言えるかもしれない。わたしは体に異変が起こったその原因を知りたくて、病院に来たのだ。しかしわたしは今日、この一言を聞くためにさんざん病院の中ほっつき歩いたんか?なんか、余計ドッと疲れた。

 医者が「過労」って言ったんだから、堂々と仕事減らしてもいいんだ。なんてったって「ドクターストップ」だもんね。
 結局、あづは権威に弱いタイプなのだ。権威を持つ人から「さあ、こうしなさい」と言われたら忠犬のごとく従うし、「はい、どうぞ」と言われたら安心してそうできるのだ。白衣は医者としての権威の象徴である。白衣のおやじの口から「過労ですね」と言われるのと、つなぎを着たおやじから「過労じゃないの」と言われるのとでは雲泥の差、というわけである。
 まずわたしは仕事量を減らすことにした。バイトの出勤日を減らし、普段やっていた活動を一旦やめ、様子を見ることにした。

 しかし、変わらない。何も変わらない。やっぱりしんどい。肩が凝って息苦しい。眠れない。こんなの今までになかった。絶対、なんかの病気だ。あの医者、何か見落としたんじゃないの?

 その夏、結婚式出席のため出向いた町で、数年来の先輩と再会した。彼女はわたしがふざけて「師匠」と呼ぶこともある、聡明な年上の女性である。わたしが自分の体調について触れた際、彼女はすぐさまこう言った。「あづ、薬の力を借りなさい。必ずラクになるから」。薬って言っても何の?だって総合病院で出されたのは肩こりの緩和剤だけだよ?
 「自律神経を整えるには漢方が効くと思うよ。わたしはこれでだいぶ調子よくなったの。内科でも処方できるところがあるから探してごらん」
 薬の力を借りる。これが一つ目の道しるべだった。
by azu-sh | 2006-04-08 23:30 | 「あづ」の「うつ」