★2012年8月、およそ6年ぶりに中国上海に帰ってきました!このブログは「AZU」が綴る、上海(サンヘー)滞在記録。ワクワクの上海生活、まるごとお届けします。ほらね、生きてるってこんなに可笑しい★


by azu-sh
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家族の待つ家に帰るということ<中国ホームステイ⑯>

 幼い頃から片親家庭で育ち、筋金入りのかぎっ子だったわたし。幼稚園の頃からひとりで八時間お留守番なんて朝飯前、当時のあづにとっては“家族”より“お友達”のほうがよほど現実味があった。シチューのコマーシャルで見る円満な家庭像にあこがれつつも、当の肉親になかなか心がひらけない。顔が似ているのに一番理解できない存在。一番近くにいるのに一緒にいて一番疲れる存在。“家族”というシステムさえなければどんなに生きていくのがラクだろう、とさえ思っていた。

 あづの下宿先の大家さん、サンへーパパとサンへーママには息子が一人いる。あづが引っ越してくる三ヶ月前に結婚して家を出て行った。サンへーママは心の中で(女の子の下宿人が来たらいいな…)と思っていたという。「息子がひとりきりで女の子はいなかったから。女の子の下宿人が来たら娘ができたみたいでうれしいなと思っていたの」。この下宿先はあづの知り合いとか友人の紹介ではなく、ふらりと入った不動産屋で見つけた物件にすぎない。けれど国籍も言語も違うあづがやってきて以来「娘ができた」と言っては喜んでくれる。家にはいつも誰かがいて、「いってらっしゃい」と見送り「おかえり、あづ」と迎えてくれる。「家族の待つ家に帰る」、そんな自然なことがわたしには最高に新鮮だった。
 あづがサンへー家族の仲間入りをして最初の三ヶ月、息子夫婦は毎日のように実家に寄って夕飯を食べていた。二人ともフルタイムで働いているから帰宅してから家事をする余裕がない。ひと足先に定年退職したサンへーパパが家族のために夕飯を用意し、みんなの帰りを待つ。あづが帰ってくると、向こうの部屋から四人のにぎやかな話し声が聞こえてくることがよくあった。
 しかし最近、食事どきになってもやけに静かだ。あづが早く帰宅してもなかなかサンへー息子とジエジエは現れない。「ねぇママ、最近あの二人来ないよね」食器を洗っていたサンヘーママにそう言うと、ママは何か意味ありげに笑って指でおなかを指して見せた。「えっっっ、もしかして息子さん夫婦に赤ちゃんができたのぉ??」思わず小学生のような声を上げてしまったあづ。「そうよ、だからバイクで毎晩ここに来るのも危ないし、自炊したほうがいいって言うのよ」…ジエジエに赤ちゃんが生まれたら、サンヘーパパとサンヘーママにとって初孫である。「わぁ、よかったね~」と言うとサンヘーママは首を振り、「アイヤ~」とうれしそうなため息をついた。
 その頃から、サンヘーパパとサンヘーママはことあるごとに「男がいい」「女がいい」だの「誰が面倒を見る」だのと言い合うようになった。もっとニコニコ喜べばいいのに、どことなく二人とも不安気で落ち着きがない。嫁の初めての出産というのは、うれしさよりも心配が先に立つものなのかもしれない。

 上海のホームステイ先での初孫誕生は、あづがそれまで知らなかった“家族の存在意義”を教えてくれる貴重な思い出となった。わたしが日本でどうしても克服できなかった“家族”への苦手意識がまさか上海の下宿先で取り払われるとは。既に一年以上前のことになるけれど、自分自身の記録として当時を思い出しながら記してみたいと思う。
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by azu-sh | 2006-05-24 17:03 | 「あづ」の中国ホームステイ