★2012年8月、およそ6年ぶりに中国上海に帰ってきました!このブログは「AZU」が綴る、上海(サンヘー)滞在記録。ワクワクの上海生活、まるごとお届けします。ほらね、生きてるってこんなに可笑しい★


by azu-sh
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地平線を焦がす爆竹の火 <中国ホームステイ⑱>

 ジエジエの料理の腕は最高だった。サンヘー息子の友人たちも次々と現れ、総勢十人くらいで円卓を囲み、パーティーが始まった。ビールが何本も開けられ、あっというまにカラになる。とびきりおいしい手作り料理に加え、尽きない話題と笑いがテーブルを彩る。
「えっ、この子日本人なの?へぇ、おまえ日本人の友達なんているんだ…?」
 サンヘー息子の友人たちがものめずらしそうにわたしを見る。サンヘー息子が言う、「この子は今うちの実家に住んでるんだ。ぼくの両親のところにね」続けてジエジエも言う、「そうよ、だからもう家族も同然よ。あたしの妹みたいなもの。ね、あづ!」ジエジエがそうわたしを紹介すると、みんなの顔が和んだ。一瞬にして、国境がなくなった気がした。
 食事が終わると、テレビを見たりアルバムを眺めたりトランプをしたり…みんな思い思いにくつろぎ始めた。明るくて居心地の良いリビングでジエジエと一緒にふかふかのソファーに腰掛けていると、彼女は自分のおなかをさすりながら言った。「この中にもうひとり人間がいるんだよねぇ…すごく不思議だよ」背が高くスリムな彼女のおなかは、まだちっとも目立っていない。「あづ、子供が生まれたら日本語教えてあげてよね。絶対バイリンガルにするんだから!」「ほっといてもバイリンガルになるよ。標準語と上海語のね!」とわたし。「あ、そうか。なーんだ、じゃあたしもバイリンガルだ♪」ジエジエはふふふ…と不敵な笑いを浮かべた。
そう、上海人は(自覚がないが)バイリンガルなのである。

 おなかいっぱいで眠くなってきたあづがそろそろ帰ろうとして腰を上げると、ジエジエにきつく止められた。「今夜はタクシーで帰ればいいから、とにかく夜の十二時までここにいなきゃだめよ、あづ。今日は危なくて外を歩けないわよ」夜の十二時?一体何が始まるの?
 しばらくすると、あづの疑問は轟音と共に解けた。鼓膜が破れそうなほどの勢いで、爆竹と打ち上げ花火の嵐が始まったのだ!春節四日目の晩は“貧乏神を追い払い財神を招く”ために、大晦日に輪をかけた爆竹合戦が行われる。爆音が四方で鳴り響き、家の中にいてももう目の前にいる人の話し声すら、いや自分の声すら聞こえない。何せ、団地中の各家庭が一斉に爆竹を鳴らすのだ。途切れずに鳴り響く爆発音と、休まず打ち上げられる巨大な打ち上げ花火。まるで銃撃戦だ!「やるぞー、あづ!!見ててごらん!!」サンヘー息子が物干し竿の先に爆竹をぶらさげ、点火して四階の窓から突き出した。鋭い火花と赤い紙を下に撒き散らしながら轟音と共に爆発する爆竹。まさか四階の窓からこんなキケンなことするなんて!しかし隣りの棟を見ると、どの家庭も窓から物干し竿を突き出して爆竹の雨を降らせている。
 あづは両手で耳を覆いながら北側の窓際に行ってみた。「わあ、す…すごい!」ジエジエの家の北側は高い建物が全くないのでぐるりとほぼ百八十度、遠くまで見渡せる。もちろん向こうのほうまでずっと住宅地が広がっているわけだし、厳密には“地平線”とは言えない。でもこれを“地平線”と呼ぶなら、見える範囲すべての地平線を縁取るかのように見事な花火が上がっていた。地平線を横一直線、すべての地点で一斉に上がった打ち上げ花火!これまで見たこともない、大規模な演出にあづは思わず鳥肌が立った。
 上海の空は血のように真っ赤で不気味に光り、道という道はすべて爆竹の紙で赤いじゅうたんが敷き詰められたかのよう。なんという光景だろう!上海が燃えている!

 その晩、あづは赤い紙ふぶきを蹴散らしながら帰途についた。興奮して、なかなか寝付けなかった。

(写真:春節の前の週、あづがサンヘーパパの家でシャワーを浴びようとしたら先客がいた。湯船におっきなブタの耳が入っていたのだ!他にもたけのこや白菜、いつのまにか風呂場が春節のための食材倉庫になっている。今夜のシャワーどうしよう…。しばらく迷った末、ブタの耳に「どけ」と言えずに引き上げてきたあづであった。さすがに翌日は意を決して食材をどかしたのだが…)
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by azu-sh | 2006-06-02 08:25 | 「あづ」の中国ホームステイ