★2012年8月、およそ6年ぶりに中国上海に帰ってきました!このブログは「AZU」が綴る、上海(サンヘー)滞在記録。ワクワクの上海生活、まるごとお届けします。ほらね、生きてるってこんなに可笑しい★


by azu-sh
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2007年 01月 12日 ( 1 )

★この物語はフランスの作家サン=テグジュペリ著「星の王子さま」のオリジナル続編です。各国のさまざまな人が「自分の出会った王子さま」の話を書いていますが、これはあづと王子さまの出会いの物語。わたしの尊敬するサン=テグジュペリさんにご報告するかたちで書いた四年前の創作童話です。★

 長い間泣いていた私は、涙が塩からくなく、かすかな甘味があることに気づいてハッと起き上がりました。味を感じて目が覚めるとは、なんて変わった起き方でしょう。
 金髪の男の子は、もういませんでした。でも不思議と惜しいとは思いませんでした。あんなに自分だけのものにしておきたかったのに、彼が友達の猫のために責任を果たしに出て行くことも望んでいたのです。我ながらおかしなものです。

 私は左の後部座席から降り、車の後ろを回って運転席に戻りました。自分の車の左後部座席に座ったのは思えば初めてのことでした。だからいつも私しか座らない運転席が遠く見えたのです。
 家に着いてから、私は急いで就寝前の薬を処方どおりに飲みました。いつものように一度にたくさん飲んでしまいたいという衝動は感じませんでした。薬を飲んだ直後はひどく口が渇くので、コーヒーカップに水で冷ましたお湯を少々入れて、夜風の中に出て行きました。
 雲ひとつ見当たらない十二月の夜空は、砂漠ほどではないものの、いつにも増して星がたくさん見えました。そのうちのひとつがけたけたと笑い出すと、つられてその隣の星も笑い出しました。それが北の空でも西の空でもいっせいに起こりました。いつのまにか夜空は笑い上戸の星でいっぱいになってしまいました。それらはすべて、私のものでした。私は、飼いならされたのです。だからあの男の子がこのどこかにいると思った時に、星たちの笑い声が耳に届くようになったのです。

 サン=テグジュペリさん。これが、去年の十二月十五日に、私が死ぬのを延期した理由です。私には私だけの井戸があって、それを他の人に譲るわけにはいかないのです。他の人たちも自分で探しに行かないかぎり、井戸はもともとないままなのです。そして私はどうやら一足先にそれを見つけて、自分のものにできたらしいのです。
 私だけの笑い上戸の星が、あの中に確かにあるのです。ちょうどあなたがそれを見ては彼をなつかしんだように。その星は金色の麦畑のように身をくねらせながら、私に向かっていつでも笑っているのです。

おわり
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by azu-sh | 2007-01-12 11:40 | 「あづ」の創作小部屋