★2012年8月、およそ6年ぶりに中国上海に帰ってきました!このブログは「AZU」が綴る、上海(サンヘー)滞在記録。ワクワクの上海生活、まるごとお届けします。ほらね、生きてるってこんなに可笑しい★


by azu-sh
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カテゴリ:「あづ」の創作小部屋( 12 )

いつもと違う日曜日の朝

信じてきたものを疑い始める
そんな瞬間を許してはならないと
脳細胞に自動制御機能がかかる

あの誓いがここまで首を絞めるなんて
あの高波がここまで胸をえぐるなんて

たった一杯のマリブミルクが
すべては悪い夢だったのだと
わたしに暗示をかけようとするけど

自らの両目に映るものを断固否定できなくて
永遠に突き放したいものがいつも手の内にあって

明けたはずの夜が太陽の下で居座り続ける
わたしの酔いを覚ますものかと絡みついたまま



いつもと違う日曜日の朝



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by azu-sh | 2012-03-11 11:46 | 「あづ」の創作小部屋

十八歳の人生観

<まだ“ブログ”というツールもなかった高校生の頃、ノートに詩を書き連ねるのが好きだった。その頃書いた詩が出てきたので、(すっかり黄ばんでいたけど)ご紹介します。言葉に若さが飛び散っていてちょっと微笑ましいけど…わたしの人生観、今でも基本的に変わってないなぁ(笑)>


   十八歳の人生観       あづ(当時18歳)

高級住宅に住んで 部屋にシャンデリアっていい
最高級車に乗って ハイウェイを飛ばすのもいい
だけどね それが人生だったら
人間 さびついちゃうわ

スイッチを押せば 全部やってもらえるっていい
ほしいものがすぐ 手に入るのって悪くない
だけどね そんな生活選んだら
人生 棒にふっちゃうわ

古くてせまいボロ家でいいの
強く明るく生きたいだけ
市場で命がぶつかりあう街
そんな場所で暮らしたい
 
高級レストランで ディナーといくのもいい
エアコンの入った 快適なリゾートホテルもいい
だけどね たまに一晩でいいの
人間 化石になっちゃうわ

人間がもって生まれた生命力
最大限に生かしたいだけ
地球の自然に溶けこんだ街
そんな場所で暮らしたい

自分の弱さに負けたくないの
若い時をむだにはしない
今のうちにきたえてもらって
たくましい私になろう
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
もうひとつの「サンへーブログ」もよろしく!

★日中二ヶ国語ブログにも遊びに来てね! → AZUのサンへーブログⅡ
★最初に中国語で、そのあと日本語でほぼ同じ文章が書いてあります。投稿した全文を見るには「查看全文>>」というところをクリックしてみてください。
★コメントは日本語でも中国語でも書けます。でも説明が全部中国語ですので、「コメントしたいけどできないよ~」という方は、こちらのエキサイトブログにコメントしてね!待ってま~す♪
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by azu-sh | 2011-05-04 12:42 | 「あづ」の創作小部屋
中国語の聖書にも書いてある。
不要说:“为什么以前的日子比现在好?”你这样问没有智慧。
(传道书7章10节)
「昔の方がよかった」と言ってはならないって。
わたしが生きているのは「今」。わたしが生きていくのは「未来」。
人はひとつの方向にしか歩けない。
ならば、前を向こう。
背筋をしゃんと伸ばして、息を深く吸って、足を高く上げて。

ほんとはね、こわいよ。
立ち止まりたいよ。うずくまってしまいたい。
ほんとはね、あの頃に戻りたいよ。
お願い。誰か教えて。
何と引き換えに昔みたいになれる?
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いつしかわたしの青い春は終わり、今は何もかも失ってしまった。
あの街に向かって開かれていた自由の扉は、もう既に時遅し。
堅く閉ざされた門の前でどんなに呼ばわっても、戸は開かない。
わたしが愛してたあの小路に、もう一度会いたいだけなのに。
飴がけ苺をほうばっていた、あの街角に立ちたいだけなのに。

「昔の方がよかった」
そんなセリフを繰り返すだけの無味乾燥なわたしにはなりたくないんだ。
外国に行くガイドブックを読んで、二時間泣いた挙句、雑誌を破った。
行き所のない涙で枕を湿らせて、自分は何のために生きたいのか考えてる。
そう、考えてる。睡眠薬の効かない回らぬ頭で、朝までずっと考えてる。
考えることで免除してもらえるなら、わたしはずっと考え続けるから。
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by azu-sh | 2009-10-31 01:04 | 「あづ」の創作小部屋

(これはあづが2000年1月1日に書いた詩です。なぜか2008年の自分に向けて書いているんです。あれから八年たち、とうとう本当に2008年になってしまいました。)

ねえ、2008年になるまで
待っててくれる?わたしのこと
わたしがスキのない笑顔を見せられるときまで

今日ね、地球はやっと2000年になったの
Y2Kとかなんとか言って 心配したけど停電しなかったわ
幾つになっても あなたは相変わらずさみしがり屋のままで
きっと2008年も あなたは猫を抱いて泣いてるんでしょうね

ねえ、カレンダーを逆さにめくって
思い出してくれる?わたしのこと
わたしがスキだらけの顔で笑ってたあのころ

今日ね、やっと99から00に変わったの
スタートに戻ってきちゃって 拍子抜けするけど現実なのよね
幾つになっても あなたは相変わらず夢見がちな女の子で
きっと2008年も あなたはこうやって言葉を連ねて遊ぶのね

夜中の三時にこっそり起きて 信号機を見に行ったじゃない
夜中でも信号は眠らないって たしかめに行ったのはだれ?
夜中の三時に銀行まで行って 小人の演奏を聞いたじゃない
その音色を追いかけていって 大人になりそびれたのはだれ?

幾つになっても あなたは相変わらず大地に耳をつけたまま
次にやってくる冒険の足音を
真っ先に聞きつけようとして
きっと2036年も あなたは永遠に続く白線の上で立ち止まり
夜中の三時に時計を合わせて
この詩の続きを書くんでしょうね
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by azu-sh | 2008-01-01 16:45 | 「あづ」の創作小部屋
グータラ少女

なーんもする気がおきないの
なーんも心配事はないけれど
なーんのやる気もおきないの

だってわたしグータラ少女よ 今頃気づいた?
地下鉄に乗って人込みの中へ
グータラなまま出かけていくわ
だれが見たってこんな女の子
記憶の片隅にも残りゃしないわ

なーんか心が見当たらなくて
なーんもする気がおきないの
なーんかしなくちゃいけない?

だけどわたし今なら自由 約束もない
完全にわたしだけ 自分のリズムで
レールのない道路だって走るわ
そんなメトロがあってもいいじゃない
みんなの記憶に焼きつけなくちゃ

だからわたし足を地につけたりしないよ
いちばん先頭に立って風を受けて
行きたいとこまで進み続けるわ
だれがわたしを引きとめようと
メトロの時速にゃかなわないはず

だれにもだれにもとめられない
自由に気づいた グータラ少女

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by azu-sh | 2007-11-28 19:01 | 「あづ」の創作小部屋
顔を洗ったら眉毛が消えて
髪をといたら笑顔が消えた
ピアス外して時計も外して
よそいき脱いだら生身の私

「ナチュラルが一番」なんて 言ってられたらしあわせ者
自然体で堂々と戦えるほど 力も知恵も何にもないのに
せいぜいよろいで武装して 強そうに見せて出向くだけ

鏡にうつった普段着の私に
笑いかけたら涙が流れた
あの子は私に私はあの子に
それぞれ腹を立てている

「多くを求めないで」なんて 私はあの子に言ってやりたい
あの子も私にそう思ってて 言いたい事を飲み込んでいる
せいぜい大きなため息ついて 相手の目をにらむしかない

できないことはできないし 背伸びしたって始まらないし
せめてあの子がわかってくれたら 私はかなりラクなのに
不安げに振り返るからつまずいて 勝利のテープに届かない

今朝もやっぱりよろいをつけて
素顔を隠して眉毛を描いて
ピアス取り替え笑顔を作る
この顔が「ナチュラル」なんて
私とあの子は認めないから
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by azu-sh | 2007-10-01 15:18 | 「あづ」の創作小部屋

詩・アイスのなぞなぞ

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緑の星の木の枝に
葉っぱはどれだけついてるの?
カロリー計算しながらも
どうしてアイスに手が伸びる?

大人たちの悩みや不安
いったいどこに出口があるの?
子供たちの怖れや難問
いったいどこに答えがあるの?

バニラアイスを食べながら
あたしはじっと考える 
アイスクリームは溶けたのに
あたしはなぜまだ生きてるの?

緑の星の木の枝の
葉っぱの疑問に答えてね
制限時間は無制限
ゆっくりじっくり考えて
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by azu-sh | 2007-01-24 15:54 | 「あづ」の創作小部屋
★この物語はフランスの作家サン=テグジュペリ著「星の王子さま」のオリジナル続編です。各国のさまざまな人が「自分の出会った王子さま」の話を書いていますが、これはあづと王子さまの出会いの物語。わたしの尊敬するサン=テグジュペリさんにご報告するかたちで書いた四年前の創作童話です。★

 長い間泣いていた私は、涙が塩からくなく、かすかな甘味があることに気づいてハッと起き上がりました。味を感じて目が覚めるとは、なんて変わった起き方でしょう。
 金髪の男の子は、もういませんでした。でも不思議と惜しいとは思いませんでした。あんなに自分だけのものにしておきたかったのに、彼が友達の猫のために責任を果たしに出て行くことも望んでいたのです。我ながらおかしなものです。

 私は左の後部座席から降り、車の後ろを回って運転席に戻りました。自分の車の左後部座席に座ったのは思えば初めてのことでした。だからいつも私しか座らない運転席が遠く見えたのです。
 家に着いてから、私は急いで就寝前の薬を処方どおりに飲みました。いつものように一度にたくさん飲んでしまいたいという衝動は感じませんでした。薬を飲んだ直後はひどく口が渇くので、コーヒーカップに水で冷ましたお湯を少々入れて、夜風の中に出て行きました。
 雲ひとつ見当たらない十二月の夜空は、砂漠ほどではないものの、いつにも増して星がたくさん見えました。そのうちのひとつがけたけたと笑い出すと、つられてその隣の星も笑い出しました。それが北の空でも西の空でもいっせいに起こりました。いつのまにか夜空は笑い上戸の星でいっぱいになってしまいました。それらはすべて、私のものでした。私は、飼いならされたのです。だからあの男の子がこのどこかにいると思った時に、星たちの笑い声が耳に届くようになったのです。

 サン=テグジュペリさん。これが、去年の十二月十五日に、私が死ぬのを延期した理由です。私には私だけの井戸があって、それを他の人に譲るわけにはいかないのです。他の人たちも自分で探しに行かないかぎり、井戸はもともとないままなのです。そして私はどうやら一足先にそれを見つけて、自分のものにできたらしいのです。
 私だけの笑い上戸の星が、あの中に確かにあるのです。ちょうどあなたがそれを見ては彼をなつかしんだように。その星は金色の麦畑のように身をくねらせながら、私に向かっていつでも笑っているのです。

おわり
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by azu-sh | 2007-01-12 11:40 | 「あづ」の創作小部屋
★この物語はフランスの作家サン=テグジュペリ著「星の王子さま」のオリジナル続編です。各国のさまざまな人が「自分の出会った王子さま」の話を書いていますが、これはあづと王子さまの出会いの物語。わたしの尊敬するサン=テグジュペリさんにご報告するかたちで書いた四年前の創作童話です。★

 海沿いのコンビニエンスストアの小さな駐車場は、次々に大型トラックが入ってきたため、一時満車状態になりました。男の子の視界は、私の車の左側に停まったトラックにさえぎられてしまいました。でも、私にはわかっていました。たとえそうだとしても、彼にはそのまた向こうの空と海が見えているのです。
 私は男の子から一歩も離れたくなかったので、車を移動させることをためらいました。ここからほんの数十メートル先に、海が見渡せる駐車場があることを私は知っていました。でも私は、一瞬でも目を離したが最後、彼が消えてしまうのではないかと怖れていたのです。運転席のシートに手をかけていながら、そこは私には遠すぎました。
 「ねえ、お願い。私を飼いならして。きみがキツネや猫にしてあげたように。」
 私はふと、自分でも驚くようなことを口にしていました。男の子の目が、また私に戻りました。
 「へえ!きみはおかしなことを言うんだね。きみはバラじゃないから覆いガラスをかぶせる必要はないし、ここは砂漠じゃないから真水は買えばいい。でもきみは井戸を探したいって言うんだね!」
 彼の言うとおりでした。私が何より望んでいたのは、私の井戸になってくれる人を見つけることだったのです。一度見つけさえすれば、私は砂漠で迷っても宇宙で迷っても、楽しい気分になれるはずなのです。私が冬の夜空を見ても楽しい気分になれないのは、私を飼いならした人が空のどの星にもいないからなのです。
 夜十一時四十五分。私が就寝前の薬を飲む時間はとっくに過ぎていました。家からの連絡も友人からのメールもうっとうしくて電源を切ったままの携帯電話は、助手席に放り投げたままでした。
 だまりこくったまま私の涙を目で追う彼は、裏地の赤い緑色のマントをはずして、私のひざにかけてくれました。それがいっそう私の涙を誘い、私は声を絞り出すように言いました。
 「わ、私にも……笑い上戸の星をひとつくれる?町の夜は砂漠の夜より明るいから、できたら少し大きめの星がいいの。鈴のように鳴る、笑い上戸の星さえあれば……。」
 マントもはずした半袖の男の子は、車の内装に興味を持った様子で辺りを見渡していました。彼の笑い声を聞くために何をしたらよいのか、わたしにはわかりませんでした。一度引っ込めた手をもう一度出して、体当たりするかのように私は彼の両肩をそっとつかみました。
 「きみが私の井戸になってくれたら、私はもう泣かなくて済むの。水がないから、涙を流すしかないんだもの。」
 男の子は動き出した隣りのトラックをちらりと見やると、言いました。
 「きみは水を買えると言ったね!近くに井戸がなくても真水は手に入ると言ったじゃないか!それなのに塩からい涙を飲むのかい?」
 トラックがウインカーも出さずに国道の流れに戻っていきました。男の子の目の前にはまた、十二月の夜空と海が広がりました。男の子は少し身を乗り出して、海を指差しました。
 「あれはもともと、きみの涙でできた井戸なのかもしれないね。出口からあふれて、たまってしまったんだ。塩からいから傷口に染みる。それが痛くて、また水が増えるんだ。ね、そうだろう?」
 意味がわかったわけではないものの、私はうなずきました。両目いっぱいにたまっていた涙が、行き所を失って男の子のマントの上に落ちました。光沢のあるきれいなマント、この子の唯一の防寒具を汚すのがしのびなくて、私は急いで涙をティッシュでふき取りました。
 「きみはちょっとだけぼくのキツネに似ているなぁ!キツネもぼくに飼いならしてほしいと言ったんだもの。簡単なことさ。ぼくの星があることを思いながら夜空を見上げりゃいいんだ。そうすればきみには全部の星が笑っているように見えて、きみだけの笑い上戸の星が持てるんだ。」
 男の子がそう言った時、私の心の中で小さな、それでいて激しい振動が起こりました。最初はいつもの副作用の頻脈かと思いました。あの薬には、厄介な副作用がたくさんあるのです。でも少ししてから、その振動が甲高くて、リズムが一定でないことに気づきました。
 それは、笑い声だったのです。黄金の麦のような髪をした男の子の、いつもの、いや最高の笑い声だったのです。

つづく
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by azu-sh | 2007-01-11 15:17 | 「あづ」の創作小部屋
★この物語はフランスの作家サン=テグジュペリ著「星の王子さま」のオリジナル続編です。各国のさまざまな人が「自分の出会った王子さま」の話を書いていますが、これはあづと王子さまの出会いの物語。わたしの尊敬するサン=テグジュペリさんにご報告するかたちで書いた四年前の創作童話です。★

 もちろん予想どおり、私のそんな気持ちが男の子に通じるはずもありませんでした。その子の体は冷えきっていて、小さな両手はマントを押さえていられないほどかじかんでいました。私が車のドアを開けると、男の子は後部座席右側におとなしく座り込みました。私は急いで左側に回り、男の子の隣、左後部座席に座りました。
 「ぼくはあの猫を見た時、わからないけどとても……とても昔のことを思い出したんだ。ぼくの友達、穴の中に住んでいたあの人だ。でもあの人はもっとしっぽがふさふさだったなぁ!」
 「猫もしっぽのけがが治れば、元のふさふさに戻るわよ。きみの上着にくるまっていれば、きっとだいじょうぶね。」
 金髪の男の子は、まだ私の目の向こう側を見ていました。車の左手のその向こうは、国道をはさんで、十二月の夜空と真っ暗な冷たい海が見渡す限り広がっていました。
 「ぼくが前に落ちた所じゃ、星がもっとたくさんあったんだ。五億よりたくさん、でも時々すーっと流れていくものもあったなぁ。ぼくの星がその中のどれなのかわからなかったけど、あの人は別にそれでもかまわないんだ。」
 彼の言った「あの人」が、ふさふさのしっぽを持っている「あの人」とは違うのだと言うことに私はとっくに気づいていました。私は言いました。
 「それは、あの空のどこかに確かにきみの星があるから。そうでしょう?」
 男の子は、私の問いかけがまるで聞こえなかったかのように話を続けました。それでいいのです。そのくらいは承知です。
 「猫は海の近くに行かないようにしていると言ったんだ。塩からい水は傷口にしみるし、飲んだらもっとひどくのどが渇くんだって。この近くに小さめの井戸がないか、きみは知らない?」
 彼の視線が初めて私の目をとらえました。
 「井戸があるかは知らないけど、きれいな真水ならすぐに手に入るわよ。きみが欲しいなら今すぐそこで買ってきてあげるから。」
と、私は店を指差しながら答えました。でも彼は、コンビニエンスストアの方を振り向きもせずに言いました。
 「ぼくじゃないんだ。水を欲しがっていたのは猫と、あの人だ。でもあの人は自分で井戸を見つけた。そしてぼくにも飲ませてくれた。……きみ、真水を買うってどういう意味?」
 反対に問いかけられた私は、頭の中で一生懸命気の利いた言葉を探しながら答えました。
 「ええと、つまり……ここはきみが前に降りた砂漠とは違うの。でもきみの猫が水を欲しがっているのなら、急いで持って行ってあげなくちゃね。きみが飼いならした猫ならきみに責任があるのよね。」
 男の子はまた私の目を飛び越えて、車窓から夜空を眺めながら言いました。
 「あの時も井戸は近くになんてなかった。ぼくたちは一晩中歩いて、ようや見つけたんだ。……井戸は探しに行かなけりゃはじめから無いんだ。ぼくの猫がまだ探しに行ってなければ、まだ井戸を見つけていないはずなんだ。」
 (この子は猫が井戸を探すのを助けに行くのかもしれない)……突然、私の胸の中に例えようもない孤独感が生まれました。私は男の子の金色の髪を見つめたまま、様々な言葉がくるくる渦巻いてからまっていくのを感じて、何も言えなくなりました。ただひとすじの涙が、まるで心の奥底からくみ上げたかのような水になって手の甲に落ちました。彼は私の涙を見て、驚いたように声を上げました。
 「あぁ、きみも泣くんだね!ぼくのバラもそんなだった!キツネもそうだ。ぼくの猫も泣いていたし、あの人だって泣いていたに違いないんだ。月明かりでごまかしていただけなんだ。」
 私はただ、彼の笑い声を聞きたかったのです。五億の鈴が天から降りてくるような、そんな心地よいはずの彼の笑い声を聞きたかったのです。

つづく
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by azu-sh | 2007-01-10 13:07 | 「あづ」の創作小部屋