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上海っ子AZUが早朝に見る夢の跡。


by azu-sh
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サンへーパパサンへーママ<中国ホームステイ⑦>

 “ぽっきり”で思い出したことがある。
 それは中国に来る四年前。わたしは日本国内で引越しをした。実家のあるS市から四県向こうのこれまた「S市」まで、たった一人で移転することになったのだ。当時から筋金入りのビンボーだったわたしは財布とよく相談した結果、「物と人の移動を合わせて三万円以内で済ませる」と予算を立てた。「物」とは布団一式を含むわたしの荷物、「人」とは自分である。ダンボールに荷物を詰めこみ詰めこみ詰めこみ……いつしか、内部がぎっしり詰まった巨大なダンボールが部屋に十五個ばかり転がり、圧縮された布団たちも輸送準備完了。クロネコさんに取りに来てもらった。輸送費は二万ウン千円かかったと思う。まずい。引越し先までの新幹線代は一万円以上かかるのだ。これでは「人」が運べない。
 ビンボーあづは残りの三千円を持って金券屋へ行った。そして「青春18きっぷ」のばら売りのやつを一枚買った。鈍行列車しか乗れないけど、確実に目的地に行けるではないか。こうしてあづの国内引越しは三万円“ぽっきり”で無事完了したのである。

 (なんだかあの時と似てるなぁ~)と思いつつ、あづはピンクのスーツケースを持って新居となる引越し先へと向かった。現実には「金がなくて自分でマンションを借りられなかったから間借りで下宿するしか選択肢がなかったビンボー放浪人」なのだが、そこは発想の転換。「語学研修と異文化体験のため海外ホームステイにやってきたリッチな日本人」とでもしておこう。
 “リッチな”あづは玄関と部屋の鍵を受け取り、王(ワン)おばさんの家の子供部屋に住むことになった。おばさんは初対面の時の印象のままでどうやらちょっぴり人見知りするタイプ、家の中でも物静かでまじめな働き者で、目が合うと必ず微笑んでくれる。ド派手なのが好きで年中お祭りのように騒がしい上海人の中では少し珍しいタイプかな?と思っていたら出身は蘇州だった。なるほど……。五十代だが今も現役で仕事をしている。毎日片道三十分以上自転車をこいで通勤し、五時半に仕事を終え六時過ぎに帰宅する。
 おじさんの方は六十代で退役軍人、でっぷりと太り、お茶目な目をしていて無二のテレビ好き。もう定年退職しているから、昼間はずーっと家にいる。中国の退職組はたいてい公園でのんびりと日中を過ごすのが好きだ。太極拳をしたり、社交ダンスに精を出したり、筋トレに励んだり、飼っている鳥を持ち寄って鳴き声の美しさを自慢し合ったり、胡弓の伴奏で昔の歌を合唱したり、あるいはただおしゃべりにふけったり。しかし、この家のおじさんとおばさんは家の中で静かに過ごす方が好きらしい。わたしたち、あまり社交的な活動は得意じゃなくてね、と笑って話すおばさんにあづは無性に親近感を感じた。

 中国人と一緒に暮らしたら生きた中国語が学べるよね♪とホームステイに期待している方がもしいらっしゃるなら、悪いことは言いません、迷わず中国北方地域を選んでください。
 なぜって上海の家庭内言語は生きた上海語なのである(泣)。あづは標準中国語(北京語)ならほぼ問題ないが、上海語知識はまったくゼロ。方言の一種と言えども、北京語と上海語では東京弁と沖縄のウチナーグチほどの差がある。ちなみに「上海」のことも、標準中国語では「シャンハイ」と発音するが上海語では「サンヘー」と言う。
 さてさて「サンへーパパ」と「サンへーママ」&あづの三人暮らし、一体どうなることやら?
by azu-sh | 2006-04-09 11:07 | 「あづ」の中国ホームステイ