★2012年8月、およそ6年ぶりに中国上海に帰ってきました!このブログは「AZU」が綴る、上海(サンヘー)滞在記録。ワクワクの上海生活、まるごとお届けします。ほらね、生きてるってこんなに可笑しい★


by azu-sh
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おばあちゃんの手作り産着<中国ホームステイ⑲>

 サンヘーママたちの寝室には、年代物の足踏みミシンがある。オークションにでも出せそうな、年季の入ったアンティークミシン。中国では、ミシンに限らず掛け時計や衣装ダンス、食器から自転車まで、日本だったら既に博物館行きでは?と思うほどの骨董品が今も現役として活躍している。あまりに旧式で、あづには使い方がわからないものさえある。日本人留学生の中には「二層式洗濯機」を見て途方に暮れた人もいたそうだが、うちのサンヘーママは普段「洗濯板」で手洗いしている。最新式は高価で手が届かないから、というわけではない。今のやり方で十分間に合っているから特にほしいとも思っていないのだ。
 「日本人は“使い捨て商品”が好きだよね。中国人はひとつの物を何年も何年も大切に使うから“一回きりでポイ”という考え方はどうもなじめないな」ある中国人がそう話していたのを思い出す。確かに日本人は次々と新しいものに買い換えては、まだ使えるものを容易に捨ててしまう。サンヘーママが見たら顔をしかめそうだ。

 日曜日、サンヘーママはミシンを部屋の真ん中まで引っ張り出してきて、一日中せっせと動かしていた。何を作っているのか気になってあづがのぞきに行くと、既に縫い上がった赤ちゃん用の服が何枚も並んでいた。数ヵ月後に生まれてくる初孫のために作った、おばあちゃん特製の手作りベビー服。
「わぁ器用だね、ママ!いつのまにこんなにたくさん作ったの?」
 あづがそう言うと、サンヘーママはミシンを止めて出来上がったものを見せてくれた。よく見ると、どれも同じデザインだが少しずつサイズが違う。
「これは生まれてすぐに着る産着よ。そして六ヶ月くらいになったらこっちを着るの。もう少し体が大きくなったら今度はこれね」
 古い衣服をほどいて使ったのでは?と思うような地味な生地ばかり。でも清潔で丈夫で、着心地よさそう。すぐに着れなくなってしまうベビー服を何枚も買い揃えるより、ずっと経済的でずっと愛情がこもっている。(生まれる前から愛されているんだね…♪)あづは小さな服を手にとり、思わずにっこり微笑んでしまった。

 そんなある日の朝早く。物音がして目覚めると、サンヘーママが緊張した表情で出かける支度をしていた。まだ仕事に行く時間でもないのにどうしたんだろう。サンヘーパパと早口の上海語で何か言い合っている。パパの表情もいつになく険しい。あづはただならぬものを感じて声をかけた。
「何かあったの?」
 サンヘーママはわたしをチラッと見、悲しそうにため息をついた。
「嫁がね、ひどく転んでしまってゆうべから不正出血が止まらないの。今から病院に行ってくるわ」
 えっ、ジエジエが?あづはドキッとした。実はこのひと月前、日本にいるわたしの実の姉が流産を経験していたのだ。不安にさせたくなかったからジエジエには内緒にしていたけど、つい姉のことが思い出されていやな予感がした。
「あの…ジエジエは大丈夫なの?」
「まだわからないわ。大丈夫だと思うんだけど…」
 そう言うとサンヘーママはあたふたと出かけていった。
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by azu-sh | 2006-06-04 01:41 | 「あづ」の中国ホームステイ